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超音波検査(卵巣)

超音波検査「卵巣」

卵巣は子宮の左右に1個ずつある臓器で、エコーで灰色の楕円形に見えます。卵子のもとの原始卵胞を蓄え、月経周期に伴い卵子を子宮に排卵します。卵巣は月経周期に伴い大きさや形が変化し、卵巣内で卵胞が大きくなり、排卵直前に卵胞は20mm程度になります。排卵後に卵胞は縮小し黄体を形成します。①~④では子宮(黄色矢印)の横に、楕円形の正常卵巣(赤色矢印)が灰色に見えています。②,③では卵巣内に、エコーで黒色に見える卵胞が確認できます。⑤,⑥は機能性嚢胞(赤色矢印)の同一症例です。機能性嚢胞は周期的な月経周期に伴い見られる嚢胞で、病的なものではなく液体成分を貯留した生理的変化で、時に6~7cm大になることもあります。単房性で壁肥厚や隔壁を認めません。⑤,⑥でも45㎜大のエコーで真っ黒に見える単房性の嚢胞を認めています。⑦,⑧は内膜症性嚢胞(赤色矢印)が疑われた同一症例です。子宮内膜類似組織が卵巣で発育・増殖することで、卵巣に嚢胞を形成したものを内膜症性嚢胞といい、内部にチョコレートのような茶色の血液成分を貯留しているためチョコレート嚢胞とも言われます。子宮(黄色矢印)の横の嚢胞(赤色矢印)は、内膜組織からの出血のため血液成分を含み、エコーでは真っ黒というより黒色の中に微細顆粒の霧状に見えています。

 


⑨,⑩,⑪は同一症例で卵巣出血の画像です。排卵後の黄体形成時に増生した血管が、時に破裂して腹腔内に出血することがあります。⑨,⑩では子宮(黄色矢印)周囲の腹腔内に、エコーで黒く見える出血(水色矢印)を認め、その中に腸間膜(青色矢印)が浮遊しています。なお、⑨,⑩の白色矢印は膀胱内に貯留した尿で出血ではありません。⑩ではエコーで黒く見える出血(水色矢印)の中に、よく見ると灰色の点状エコーが霧状にみえ、これは血液成分のため霧状に見えています。⑪では大量出血(水色矢印)内に浮遊した子宮(黄色矢印)の横に、黄体嚢胞(赤色矢印)を認めています。黄体嚢胞は排卵後に血液成分が貯留した嚢胞で、この卵巣出血では黄体嚢胞からの出血が疑われました。⑫,⑬,⑭は同一症例の嚢胞性腫瘍(赤色矢印)の画像です。全体で10cm以上もある嚢胞性腫瘍で、内部に隔壁を伴う多房性の病変です。ただし隔壁の壁肥厚や充実性部分は認めず、腹水も認めないことなどから、良性の嚢胞腺腫と考えられました。嚢胞内は一部で霧状の灰色部(白色矢印)を伴っており粘液性成分を反映していると考えられます。このような粘液性嚢胞腺腫は時に悪性のこともあるものの、大部分が良性の嚢胞腫瘍です。


⑮,⑯,⑰は卵巣の悪性腫瘍(赤色矢印)の同一症例です。10cmを超える大きな嚢胞性病変(赤色矢印)で、隔壁を伴う多房性の腫瘍です。⑮,⑯では、腫瘍の隔壁の一部は肥厚して充実性の部分を伴っており、悪性の卵巣腫瘍と考えられました。腹腔内には多量の腹水(水色矢印)を認め、⑰では肝臓(黄色矢印)の表面や、腎臓(緑色矢印)と肝臓(黄色矢印)の間のモリソン窩にも、多量の腹水(水色矢印)がエコーで黒色に見えています。⑱,⑲,⑳も悪性卵巣腫瘍の同一症例です。⑱では、腹腔内に多量の腹水(水色矢印)がエコーで黒色に見え、腹水の中に腸間膜(青色矢印)が浮遊している像が見えます。⑱では、その腸間膜(青色矢印)の上に増大した7cmを超える腫瘤(黄色矢印)が確認でき、腸間膜上に悪性腫瘍が進展した病態が疑われました。⑲では、エコーで真っ黒にぬけて見える嚢胞成分を有した腫瘍(赤色矢印)が腹水(水色矢印)の中に浮遊している像を認め、卵巣悪性腫瘍が腹膜に進展した腫瘍と一塊となっている病態が考えられます。⑳では、多量の腹水(水色矢印)の中に、浮遊した腸間膜上で増殖した腫瘍の塊(黄色矢印と紫色矢印)が複数見え、腫瘍が腸間膜や腹膜に播種し腹腔内に広がっているのが確認できます。

 

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