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超音波検査(大腸②)

超音波検査「大腸②」

便秘時など排便のため強く腹圧をかけたりすると、大腸内圧が上昇し腸管蠕動運動が亢進して、大腸粘膜への血流が一時的に不十分になり、腹痛や血便を生じることがあります。これは虚血性大腸炎という病気です。大腸は上腸間膜動脈と下腸間膜動脈という2本の動脈から血液を受けていて、その2本の動脈の血流領域の境界にあたる下行結腸からS状結腸にかけて虚血性大腸炎は好発します。虚血性大腸炎は、動脈硬化などの血管側の因子も発症に関与しているため高齢者に多く見られ、しばしば下行結腸からS状結腸に連続した大腸壁の肥厚がエコーで観察されます。①~③は同一症例の虚血性大腸炎のエコー画像です。短軸像では層構造が保たれた壁肥厚が、弓道の的の様に、内側から白・黒・白・黒と肥厚して見え、特に第3層の白色に見える粘膜下層の壁肥厚が高度に見られます。②の長軸像でも、バームクーヘンのように層構造が保たれた壁肥厚を認めます。④~⑥はS状結腸を中心とした虚血性大腸炎の同一症例画像です。④のエコー画像では比較的層構造を保った壁肥厚をS状結腸に認め、⑤,⑥の内視鏡像では、一過性の虚血により連続性に真っ赤にただれて、縦走傾向のびらんを伴う粘膜障害が確認できます。


虚血性大腸炎の内視鏡像では⑤,⑥の様に縦走傾向を示した発赤やびらんをみとめるとともに、ときにシダの葉の様に見える発赤調の粘膜変化を認めることもあります。⑦,⑧も虚血性大腸炎の内視鏡画像で、⑦は縦走傾向の粘膜障害を、⑧ではシダの葉の様に見える発赤調の粘膜障害を認めています。虚血性大腸炎では、炎症が軽度の場合には、比較的層構造が保たれた粘膜下層中心の壁肥厚を示すことが多いものの、炎症が高度になると層構造が破壊された壁肥厚を認めるようになります。⑨~⑪は下行結腸からS状結腸に認めた中等度~高度の虚血性大腸炎の症例で、エコーで白色に見える第3層の粘膜下層が高度に肥厚しています。そのため、腸管の壁肥厚により腸管内ガスは追いやられ、⑨~⑪のエコー画像では白色に見えるはずの腸管内ガスの第1層は見えません。また黒色に見える第2層の粘膜層は、第3層の粘膜下層の肥厚により判別が難しくなっています。第4層の黒色に見える筋層(桃色矢印)は一部で保たれていますが、第3層を中心とした高度の壁肥厚のために層構造が一部で判別困難になり、8mm~10mm程度の壁肥厚を認めています。


虚血性大腸炎は、便秘の時など排便のため腹圧をかけたりすることが発症の契機になることがしばしばありますが、時に大腸癌による大腸狭窄により便の通過障害をきたし、虚血性大腸炎を発症することもあります。⑫~⑯は、大腸癌が契機となり発症した虚血性大腸炎の同一症例画像です。⑫~⑭は、虚血性大腸炎を発症時のエコー画像で、⑫で見られるように左側の横行結腸から、⑬の下行結腸、⑭のS状結腸と連続性の大腸の壁肥厚を認めます。⑭では、S状結腸も連続性に壁肥厚を認めますが、数週間の安静加療で虚血性大腸炎が改善した後に施行した超音波検査の画像⑮でも、S状結腸に限局性の壁肥厚(赤色矢印)を認めています。この⑮では、内部が白く、筋層中心の壁肥厚が外側に黒くみえる「シュード・キドニー・サイン」を示しています(シュード・キドニー・サインについては、「超音波検査(消化管)」参照)。この病変を大腸内視鏡で観察すると、⑯の画像のように大腸内腔の狭窄をきたす進行大腸癌を認めていました。このように、虚血性大腸炎の発症には、大腸癌などの器質性の腸管狭窄が関与する事があるため、虚血性大腸炎を発症した場合には、保存的治療で腹痛や血便の症状が改善した後にでも、一度は内視鏡検査による精密検査が勧められます。

 

参考ブログ:

虚血性大腸炎

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