超音波検査「胃②」
胃アニサキスは、内視鏡で①の水色矢印のようなアニサキスの虫体が発見できれば確定診断となりますが、内視鏡で虫体自体を発見できなくても病歴やエコー像や内視鏡像などから胃アニサキスと診断できることもあります。②~⑦はアニサキスの虫体を内視鏡で認めなかったものの、胃アニサキス症と診断できた同一症例画像です。さばを食べた翌日にみぞおち付近の強い痛みで受診し、②,③のエコー画像では胃壁の高度肥厚を認めました。③では白く見える胃内ガス(白色矢印)深部に、粘膜層(水色矢印)、粘膜下層(緑色矢印)、筋層(赤色矢印)、漿膜(黄色矢印)が黒・白・黒・白と肥厚し、第3層の粘膜下層(緑色矢印)主体の層構造が保たれた壁肥厚を認めます。内視鏡では虫体は見られず、急性胃粘膜病変(AGML)のようなびらんなどの粘膜変化はないものの、内視鏡で④,⑤の様になだらかな丘(緑色矢印)の様な変化と頂上に発赤(桃色矢印)を認めます。アニサキスが粘膜にかみつくと発赤・びらんを認め、胃壁内に迷入したりすると時に周囲が粘膜下腫瘍の様に盛り上がることが知られており、隆起は虫体へのアレルギー反応と考えられています。同部位をエコーで見た⑥,⑦では、白く肥厚した粘膜下層内に、内視鏡像の隆起に相当する黒色の腫瘤様組織(紫色矢印)が確認できます。
⑧~⑬も、内視鏡ではアニサキスの虫体を認めなかったものの、胃アニサキス症と診断できた同一症例の画像です。しめさばと生カツオを摂取した約12時間後にみぞおち付近の激痛で来院され、腹部エコーでは胃全体の高度な壁肥厚を認めています。⑨では第1層の胃内ガス(白色矢印)から胃壁深部に向かって、第2層の粘膜層(水色矢印)、第3層の粘膜下層(緑色矢印)、第4層の筋層(赤色矢印)、第5層の漿膜(黄色矢印)が、白・黒・白・黒・白と比較的層構造を保ったまま肥厚しています。内視鏡検査では胃内はAGMLの様な広範な粘膜障害は見られず、⑪,⑫のようななだらかな丘状の小隆起と、その隆起の頂上に浅いびらん面を認めていました。びらんは小さいもののエコーでは胃全体が高度壁肥厚を示しており、虫体が粘膜面にかみつくことで生じるアレルギー反応で小隆起を認め、かみついた虫体が脱落して小びらんを発生したと考えられます。アニサキスによる胃壁の肥厚はアレルギー反応で起こるため、刺入部が小さくても胃全体の高度の壁肥厚を生じ、また時に十二指腸壁の肥厚や腹水の貯留を認めることもあります。⑨,⑫,⑬のエコー像では胃の背側にごく少量の腹水(紫色矢印)が黒色に見え、⑬では内部に腸管ガスを含み壁肥厚を示す十二指腸壁(黒色矢印)も確認できます。
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