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超音波検査(胃①)

超音波検査「胃①」

胃は食べた食物が食道を通過した後に入る臓器で、肋骨のすぐ足側にある袋状の臓器です。①の赤色矢印は正常胃のエコー画像です。胃(赤色矢印)は、肝臓(紫色矢印)の足側で、膵臓(水色矢印)の腹側にあり、胃壁は大腸などの腸管と同様に4層構造をしています。胃は小腸や大腸より壁が厚く、正常の胃では粘膜層から深層に向かって黒・白・黒・白の層構造が確認できます。胃に炎症が起きると胃壁が肥厚し、胃壁の層構造がさらにはっきり確認できるようになります。②~⑥は急性胃粘膜病変(AGML)の同一症例画像です。ストレスや薬剤、過剰飲酒など様々な原因で胃粘膜に炎症をおこすことで障害をきたすAGMLでは、エコーで胃全体に高度の壁肥厚が確認できます。②の画像でも胃壁の高度肥厚(赤色矢印)が確認でき、③,④の拡大像では白く見える内腔ガスの第1層(白色矢印)から深部に、粘膜層(水色矢印)、粘膜下層(緑色矢印)、筋層(赤色矢印)、漿膜(黄色矢印)が順に黒・白・黒・白に確認できます。AGMLでは粘膜下層(緑色矢印)中心の壁肥厚を認めますが、壁の層構造は比較的保たれています。⑤,⑥は同一症例の内視鏡画像で、黒く変色した血液の付着するびらん面や浅い潰瘍面が胃内に多発しています。


⑦~⑫は胃アニサキスの同一症例画像です。アニサキスとは、サバやイカなどの海産魚類に寄生する体長2~3cmの線状の寄生虫で、アニサキスが寄生する魚介類を生食すると、アニサキスが人体の胃や腸に刺入するため激しい腹痛や悪心・嘔吐などを生じます。アニサキスは人の体内では長期間生存することはできず死滅するため、摘出しなくても自然に改善するものの、内視鏡で虫体を摘出できれば症状は速やかに改善するため、アニサキスが疑われた場合には診断と治療を兼ねて内視鏡検査が行われます。アニサキスの症状は虫体に対するアレルギー反応で起こるとされており、⑦~⑨の様にエコーで見ると胃全体に高度な壁肥厚を認めます。⑧,⑨の拡大像では、白く見える胃内ガスの第1層(白色矢印)から胃壁の深部方向に、粘膜層(水色矢印)、粘膜下層(緑色矢印)、筋層(赤色矢印)、漿膜(黄色矢印)が順に、黒・白・黒・白に確認できる層構造が保たれた壁肥厚を認め、特に粘膜下層(緑色矢印)を中心とした壁肥厚が確認できます。エコーではアニサキスはAGMLと同様の壁肥厚画像を示すため、エコー像だけでは両者の鑑別はできません。⑩の内視鏡像では刺入部(黄色矢印)で粘膜にかみつくアニサキス(水色矢印)が確認でき、⑪,⑫では内視鏡によりアニサキスを摘出しています。

 

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