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超音波検査(虫垂)

超音波検査「虫垂」

エコーでは気体があるとその背後が見えなくなるために、中にガスを含む腸管はエコーでは評価が難しいことも多いものの、種々の疾患で腸管壁が肥厚した場合には、エコーにより腸管の病気が観察できることもあります。虫垂は小腸が大腸に移行した部分の盲腸から出ており、正常では4~5㎜の太さで長さが7㎝程度のひも状の突起物ですが、大きさには個人差もあります。便が固まった噴石などが虫垂を閉塞したりすることで、細菌感染を起こす病気が虫垂炎で、一般の人には「盲腸」という呼び名で知られています。正常虫垂はエコーでははっきり見えないことが多いものの、虫垂炎をおこし炎症により腫大するとエコーで観察できることもあります。ただし、腸管ガスがかぶると虫垂炎を起こしていてもエコーで描出できず、憩室炎や付属器炎など他の疾患と鑑別が難しいこともあります。①~③は虫垂炎の同一症例で、虫垂炎により7㎜程度に腫大した虫垂(赤色矢印)が、中心から黒・白・黒と肥厚した像で描出されています。③の長軸像では肥厚した虫垂内部に、小さな噴石(紫色矢印)がエコーで白色に見えています。④,⑤は別の虫垂炎の同一症例画像で、10㎜大に肥厚した虫垂(赤色矢印)がエコーで観察できます。


⑥~⑨は、虫垂炎の同一症例の画像です。⑥~⑨では、炎症のために7㎜大に肥厚した虫垂(赤色矢印)が、腸腰筋(黄色矢印)の前面を横切り、ドップラーで色が付いて見える腸骨動脈(緑色矢印)と腸骨静脈(水色矢印)の前面に向けて走行して見えています。⑧,⑨では肥厚した虫垂内に、白色に見える4.6㎜大の噴石(紫色矢印)も認めています。虫垂炎がエコーで観察される場合、腫大した虫垂はこの症例の様に腸腰筋の前面から腸骨動静脈のある骨盤内方向に見えることが多いものの、上行結腸の裏側に虫垂が回り込むように位置することも時にあります。⑩~⑫は上行結腸背側に回り込んだ虫垂炎の症例です。⑩では虫垂炎の炎症のために肥厚した上行結腸(緑色矢印)が短軸像で見えており、その背側の腎臓(白色矢印)との間には、少量の腹水(水色矢印)がエコーで黒色に見えます。⑪では肥厚した上行結腸(緑色矢印)が長軸像で見え、腎(白色矢印)表面に腹水(水色矢印)と、上行結腸背側に淡黒色の微小膿瘍(紫色矢印)を認めます。⑫では上行結腸背側に肥厚した虫垂(赤色矢印)と、周囲に微小膿瘍(紫色矢印)と少量腹水(水色矢印)も認め、虫垂の微小穿孔による腹腔内への炎症波及が観察されます。このように上行結腸背側に虫垂がある場合、虫垂の観察・同定が難しいことがしばしばあります。

 

参考ブログ:

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