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超音波検査(腎臓①)

超音波検査「腎臓①」

腎臓は約10㎝大のそら豆型をした、腰あたりの背部に左右一つづつある臓器で、血液中の不要な老廃物をこしとり尿を作る働きをしています。腎臓は外側の腎実質(皮質と髄質)の部分と、腎杯・腎盂と脂肪組織からなる内側の2層構造ををしており、エコーで正常な腎臓を観察すると、外側が黒く内側が白い円盤状の臓器に見えます。中心の白色部は、中心エコー帯(CEC:Central Echo Complex)と呼ばれ、腎実質で作られた尿が通過する腎杯や腎盂から構成されています。①は正常の右腎(黄色矢印)で、肝臓(赤色矢印)の足側にありCECがはっきり見え、約11cmの長径があります。②は正常の左腎(黄色矢印)で、脾臓(赤色矢印)の足側でCECが見える2層構造をしています。腎機能が低下した慢性腎不全の腎臓は、外側の腎実質が白く萎縮し、CECが判別困難になります。③は慢性腎不全の左腎(黄色矢印)で、長径は7cm大に萎縮しCECが判別しにくくなっています。③の赤色矢印は腎嚢胞です。④は慢性腎不全の右腎(黄色矢印)で、肝臓(赤色矢印)の足側にあり、長径は9cm大と萎縮はそこまでではありませんが、CECが判別困難になっています。糖尿病による腎不全では、萎縮が軽度であることがしばしばあります。


⑤⑥⑦⑧は腎嚢胞の画像です。腎臓にも肝臓と同様に嚢胞ができることがあります。嚢胞とは液体成分が貯留している袋状の成分で、一般的に腎嚢胞は肝嚢胞と同様に良性疾患で、治療の必要はありません。嚢胞は液体成分を貯留しており、エコーで見ると真っ黒に抜けた無エコー像を示すため、判別は比較的容易なことが多いです。黄色矢印の腎像内に、⑤では2cm弱、⑥では9mm大の嚢胞が、⑦では腎外にも突出する約4㎝大の腎嚢胞が赤色矢印の部分に見られています。エコーでは、よく動いている部分は色を付けて表現できるドップラーという機能があります。血管内の血液は心臓の拍動により血流が流れ、よく動いているためにドップラー機能で見ると色がついて見えますが、嚢胞内の液体成分は動いおらず、⑤⑥の様にドップラーで見ても真っ黒に抜けた像に見えます。また、腎嚢胞は時に腎臓内に多発したりすることもあります。嚢胞が少なければ、一般的に腎機能には大きな影響はありませんが、あまりに多発すると腎機能低下の原因となることがあります。⑧では腎臓内に嚢胞が多発しています。


⑨⑩は同一病変です。⑨と⑩では、エコーで黒色に見える腎の外側部の腎実質に、約4mm程度の白色部(赤色矢印)を認めています。これは腎石灰化です。何らかの原因で傷んだ腎の組織の一部が、石の様に固く石灰化し、エコーで白色に見えています。超音波を背後に通さず、⑩では背部に黒色の影(緑色矢印)を引いています。腎石灰化も一般的に病的意義は乏しいです。⑪⑫は同一症例で、腎杯内にある腎結石です。腎臓の腎実質で生成された尿は、腎内の尿の通り道である腎杯・腎盂を通り、腎外にある尿管に送られ下腹部にある膀胱に貯留されます。この尿の通り道に石ができることがあり、腎内の腎杯や腎盂にできた結石が腎結石です。⑪では腎臓(黄色矢印)の中に白い腎結石(赤色矢印)を認め、結石は強くエコーを反射するために背後に影(緑色矢印)を引いています。⑫では尿が貯留して黒く見える腎杯(青色矢印)の中に5~6mm大の白色の腎結石(赤色矢印)を認め、背後に黒い影(緑色矢印)を引いています。腎結石が尿管に落ちて、尿の流れを止めてしまうと尿管結石となり、時に強い腹痛や背部痛の原因になります。腎結石や腎石灰化はともに、背後に影を引く腎臓内の白色像として見えるため、小さいものでは腎結石と腎石灰化は区別しにくいこともしばしばあります。

 

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