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超音波検査(小腸②)

超音波検査「小腸②」

腸閉塞は、何らかの原因で食物や消化液が小腸内を通過できず、腸液が鬱滞して小腸が拡張する病気です。正常の消化管では食物を消化するために多量の消化液が腸管に分泌され再吸収されますが、腸閉塞では通過障害のため消化液の再吸収が阻害され小腸内に消化液が貯留し、便やおならが出なくなり、腹部膨満や腹痛、嘔吐などの症状を認めます。①~⑥は腸閉塞の同一症例画像です。エコーで黒色に見える腸液が小腸(赤色矢印)に貯留し、腸液内には白色粒状の内容物も見えます。この内容物が浮遊し行ったり来たりする像(to and fro)は、腸閉塞の典型的エコー所見です。③~⑤では黒色に見える腸液の中に、ケルクリングと呼ばれる小腸ヒダ(緑色矢印)が白色線状に見え、これはキーボード・サインと呼ばれる所見です。黒色の腸液と白色の小腸ヒダがピアノの白黒の鍵盤の様に見えるためについた名前で、腸閉塞に特徴的なエコー像です。⑥は同一症例の腹部レントゲン画像です。正常の小腸では腸管の蠕動運動により小腸内にはガスはほとんど貯留していませんが、腸閉塞では小腸内に腸液や小腸ガスが貯留します。立位でレントゲンを撮ると、黒く見える小腸ガス(赤色矢印)の貯留と腸液の水面(水色矢印)が見え、これは「鏡面像(二ボー)」と言われる腸閉塞に典型的な所見です。


腸閉塞は種々の原因で起こるものの、過去に腹部の手術を行ったことなどで起こる癒着が最多の原因となっています。小腸は腸間膜という膜に覆われていますが、過去に手術をしたことがある人は手術の影響で腸間膜の癒着が起こり腸管の一部の屈曲が強くなったりすることで腸閉塞を起こしやすくなります。それ以外に、腫瘍性病変による閉塞、消化の悪い食物による閉塞、腸の捻転、腹腔内や臍や鼠径部などの狭い部分に小腸がはまり込むヘルニアでも腸閉塞は起こります。⑦~⑫は癒着性の腸閉塞の同一症例画像です。腸液が貯留し拡張した小腸(赤色矢印)の中には、腸管内容物の貯留を認め、白色粒状の内容物が浮遊するto and froの像を示しています。また一部の小腸では小腸ヒダ(緑色矢印)を伴い、キーボード・サインも確認できます。小腸内には、背後に黒く影(桃色矢印)を引く小腸ガス(白色矢印)の貯留像もエコーで白く見え、さらに腸管の間にはエコーで黒色に見える腹水(水色矢印)も確認できます。⑫は同一症例のレントゲン写真で、腸管ガス(赤色矢印)と共に腸液の水面(水色矢印)が鏡面像(二ボー)を形成し、よく見ると小腸ガスの中にうっすらと小腸ヒダも見えます。本症例は少量の腹水を認めたものの、血行障害は起こしていなかったため外科的治療は必要とはならず、専門病院に入院して絶食と点滴による保存的治療で改善しました。

 

参考ブログ:

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