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上部内視鏡(逆流性食道炎)

上部内視鏡(逆流性食道炎)

胃食道接合部は巾着の様にしまることで食べた物が逆流しにくくなっていますが、胃酸が食道に漏れて逆流することで食道粘膜を損傷する病気が逆流性食道炎です。①は正常の胃食道接合部の画像で、あみだくじ状の赤い毛細血管が見える正常の食道粘膜(水色矢印)と胃粘膜(白色矢印)の間に、粘膜境界線(緑色矢印)が見えています。②,③はごくごく軽度の逆流性食道炎の同一症例画像です。粘膜境界線(緑色矢印)付近の一部の食道粘膜(赤色矢印)は、胃酸による炎症のため白濁し毛細血管が確認できません。白濁する程度の粘膜変化は内視鏡的にはほぼ正常ですが、敏感な人ではこれくらいの炎症でも胸やけや腹痛の症状を強く自覚する人もいます。④,⑤も軽度の逆流性食道炎の同一症例画像ですが、粘膜境界線(緑色矢印)付近で白濁した食道粘膜(赤色矢印)の中に、5mm以下の発赤調の粘膜障害部(黄色矢印)を認めており、②,③よりも胃酸による強い食道粘膜障害が確認されます。⑥,⑦の画像も一部の食道粘膜が白濁するごく軽度の逆流性食道炎(赤色矢印)ですが、紫色矢印の部分では慢性的な胃酸の逆流により食道粘膜が胃粘膜に類似した上皮に変化しています。この胃粘膜様に変化した食道粘膜はバレット上皮と呼ばれ、慢性炎症により稀に食道癌を発生することが知られています。


逆流性食道炎の重症度は粘膜障害の程度によりLos分類という分類で、Grade M:白濁のみのごく軽度の炎症、GradeA:5mm以下の線状の粘膜障害、GradeB:5mm以上の線状の粘膜障害、GradeC:2条以上の粘膜障害が連続するも全周性ではない、GradeD:全周性の粘膜障害、の5段階に分けられています。⑧,⑨は重症度GradeBの逆流性食道炎の同一症例画像です。白濁した食道粘膜(赤色矢印)の中に、線状の粘膜損傷部(黄色矢印)が5mm以上の長さで赤く数本確認できます。⑩,⑪も重症度GradeBの逆流性食道炎で、胃酸の逆流のために毛細血管が見えにくくなり白濁した食道粘膜(赤色矢印)の中に、赤色線状の粘膜障害部(黄色矢印)を2本認めており、粘膜損傷部の一部からは軽度出血を伴っています。⑫は別の逆流性食道炎の同一症例画像で重症度GradeBとなる線状粘膜障害部(黄色矢印)を2本白濁した粘膜(赤色矢印)内に認めており、また逆流による慢性炎症のため一部の食道粘膜ではバレット上皮(紫色矢印)を生じています。⑬,⑭は重症度GradeCの逆流性食道炎の同一症例画像で、数条の帯状に縦走する粘膜障害部(黄色矢印)を認めるとともに、胃食道接合部近くの⑭画像では、全周性ではないものの、粘膜障害部(黄色矢印)が連続して食道管腔の半周以上に広がっています。


⑮~⑰は重症度 GradeCの逆流性食道炎の同一症例画像です。⑮,⑯では、全周性ではないものの線状よりは太い帯状の粘膜障害(黄色矢印)を認めるとともに、粘膜障害内部に白苔の付着した潰瘍形成(黒色矢印)を認め、胃食道接合部の粘膜は高度に損傷しています。潰瘍周囲の食道粘膜は白濁し、一部白濁が高度な部分 (灰色矢印)では繰り返す炎症による変化により、内腔の狭窄性の変化が疑われる変形があるもの、内視鏡の通過は容易でした。⑰は同一症例の胃側からの画像ですが、内視鏡(青色矢印)の周囲に食道裂孔ヘルニアによる空間(桃色矢印)を認めており、高度な逆流性食道炎の発症に食道裂孔ヘルニアが関与していました。食道裂孔ヘルニアがあると、胃食道接合部のしまりが悪くなるため逆流性食道炎を併発します。また逆流性食道炎よる炎症が慢性的に高度になり潰瘍形成を繰り返すと、時に食道胃接合部の狭窄を認めることもあります。⑱~⑳は重症度Grade Dの逆流性食道炎の同一症例画像です。食道粘膜は全周性の粘膜障害により発赤調の変化(黄色矢印)を認めており、損傷を受けた食道粘膜の一部には白苔を伴う浅い潰瘍形成(黒色矢印)が確認できます。この症例でも⑳の胃側からの観察では食道裂孔ヘルニア(桃色矢印)を認めており、高度な逆流性食道炎の発症に食道裂孔ヘルニアの病態が関与していました。

 

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逆流性食道炎  食道裂孔ヘルニア