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上部内視鏡(マロリーワイズ症候群)

上部内視鏡(マロリーワイズ症候群)

マロリーワイズ症候群とは、激しい嘔吐を何度か繰り返すと急激に腹圧が上昇し、胃と食道の境界部付近の粘膜が損傷して出血する病気です。激しく嘔吐を繰り返すことで腹圧が上昇すると、食道胃接合部付近の胃粘膜は食道内に押し上げられます。そのような物理的な動きや腹圧がかかることにより、粘膜損傷を起こし吐血します。はじめは嘔吐しても血液が混じっていなかったのに、何度か嘔吐を繰り返したのちに新鮮な血液を嘔吐するというのが、典型的なマロリーワイズ症候群の病状経過です。一見すると重篤な病気の様に感じられるものの、マロリーワイズ症候群では多くの場合で腹痛や胸痛を認めることもなく、嘔吐などの腹圧上昇を起こす要因が改善すれば自然に止血され、多くの場合は制酸薬や吐き気止めの投与により自然に改善します。①~③はマロリーワイズ症候群の同一症例画像です。①,②では食道胃接合部の胃側に線状の裂創(白色矢印)を認めており、周囲に出血が確認できます。この症例も傷は深くはなく、制酸剤投与による保存的な治療で改善しています。③は同一症例の出血翌日の内視鏡画像ですが、胃粘膜に裂創(青色矢印)が確認できますが、翌日には自然止血しています。


マロリーワイズ症候群の最も多い誘因は飲酒です。下部食道にある食道括約筋が収縮すると胃内の食物が食道内に逆流しないようになっていますが、アルコールは食道括約筋を弛緩させるために、胃からの圧力が容易に伝わることで発症します。ただし、飲酒をしていなくても激しく嘔吐をするとマロリーワイズ症候群を起こすことはあり、嘔吐下痢やめまい疾患に伴う激しい嘔吐や、妊娠中のつわりでもマロリーワイズ症候群は発症します。マロリーワイズ症候群では多くの場合で自然止血するものの、傷が深く出血が高度である場合には内視鏡による創の閉鎖と止血が必要になることもあります。④~⑧は止血処置を必要としたマロリーワイズ症候群の同一症例画像です。後壁側の裂創からの出血に対し、⑤,⑥ではクリップで裂創を塞ぎ、⑦では出血創の周囲に止血剤を局所注射をしています。⑧は止血処置の翌日の内視鏡像ですが、胃内には出血を認めておらず、前日の処置で止血できていることが確認できます。⑨~⑬も止血処置を必要としたマロリーワイズ症候群の同一症例画像です。⑨~⑪では大きく開いた裂創から出血と血餅の付着を認め、出血創内部に露出血管(黄緑色矢印)が確認できます。⑩では露出血管を伴う裂創にクリップでの創閉鎖を行い止血し、止血翌日の内視鏡像である⑪でも、きちんと止血できていることが確認できます。