全身倦怠感(体がだるい)
倦怠感(体がだるい)とは
倦怠感とは何もしていなくても体が重く気力のない状態や、少しの動作をしただけで疲れて動きにくくなる状態で、一時的な疲れと異なり十分に休息をとっても改善しない体のだるさが強い状態です。倦怠感は、何らかの原因により身体を一定の状態に保てなくなっているために生じていることがしばしばあり、その治療法も原因疾患により異なります。倦怠感の原因としては感染症などの炎症により体のだるさを感じることは比較的多く見られ、この場合には倦怠感とともに炎症に伴う発熱をしばしば認めます。それ以外に甲状腺機能低下症や糖尿病や電解質異常などの代謝・内分泌疾患、貧血などの血液疾患でも倦怠感は見られ、悪性腫瘍では早期には自覚症状がほとんどないものの病状が進行すると何とも言えないだるさや全身の倦怠感を生じることがあります。また、心不全や呼吸不全、腎障害や肝障害により全身状態が悪化することで全身の倦怠感を認めることもあります。さらに精神的なことが原因で体のだるさを感じたり、薬の副作用でも倦怠感の原因となることがあります。そのために倦怠感を認める患者さんでは各種検査によりその原因を特定し、その原因疾患に応じて適切な治療を選択する必要があります。
全身倦怠感の原因と症状
全身倦怠感を生じる原因にはさまざなな病態があげられます。その原因は、①炎症性の疾患、②代謝・内分泌疾患、③血液疾患、④悪性腫瘍、⑤精神科領域の疾患、⑥その他の原因、に大きく分けられます。①の炎症性の疾患には、インフルエンザ、コロナウイルス感染などの感染症があり、倦怠感や体調不良と共にしばしば発熱を伴います。②の代謝・内分泌疾患では、糖尿病や電解質異常などの代謝異常や、甲状腺機能低下症などのホルモン分泌異常などの内分泌疾患があげられます。③の血液疾患でよく見られるのは鉄欠乏性貧血で、④の種々の悪性腫瘍でもしばしば全身倦怠感を伴います。また、身体的には明らかな異常がはっきりしないものの精神的な影響により倦怠感が見られることもあります。それ以外の倦怠感の原因としては、心肺機能低下や腎障害、肝障害の進行による全身状態の悪化や、睡眠時無呼吸症候群でも倦怠感を認めることがあり、また他の病気の治療のために内服している薬の影響で倦怠感を認めることも時にあります。
①炎症性の疾患
風邪やインフルエンザ、コロナ感染症、肺炎、胃腸炎、尿路感染症など、ウイルスや細菌の急性感染ではしばしば発熱を伴う全身倦怠感を認め、感染症による炎症が倦怠感の原因になることは頻度的にもよく見られます。感染症では、しばしばその原因となる細菌やウイルスなど微生物の種類により発熱以外の症状を認めることが多く、インフルエンザやコロナなどの気道感染では咳や咽頭痛や痰などの上気道症状を、胃腸炎では下痢や嘔吐、腹痛などの消化器症状を、腎盂腎炎などの尿路感染症では排尿時痛や頻尿などの泌尿器症状を、発熱や倦怠感以外に多くの場合に認めます。またコロナウイルス感染症では、治癒後も時に倦怠感や頭痛などの後遺症が持続することがあります。また、感染症以外にリウマチなどの膠原病による慢性炎症が持続することでも、全身倦怠感を認める場合があります。
②代謝・内分泌疾患
代謝や内分泌の異常が倦怠感の原因になるとこともしばしばあります。糖の代謝異常である糖尿病では、軽度であれば多くの場合には自覚症状はほとんどありませんが、病状が進行すると全身倦怠感や体重減少、頻尿などの症状を認めるようになります。また、頻度的には多くないものの、低ナトリウム血症や高カルシウム血症などの電解質の代謝異常でも倦怠感や活動性低下を認めることがあります。さらに、全身倦怠感の原因として、甲状腺機能低下症などのホルモンの分泌異常を生じる内分泌疾患があげられます。甲状腺からのホルモン分泌が低下すると全身の代謝が低下し、倦怠感や寒がりの症状がみられたり、便秘や皮膚乾燥・脱毛などの症状が見られることもあります。また中年女性の更年期障害では、女性ホルモンの分泌低下よるホルモンバランスの変化により倦怠感を自覚することがしばしばあります。
③血液疾患
貧血が倦怠感の原因になることはしばしばあります。体中に酸素を運搬する赤血球が減ってしまうと十分な量の酸素を体中に供給できず、全身倦怠感や体動時の息切れ・動悸などの症状を自覚します。貧血の原因には、ビタミン欠乏や葉酸欠乏、造血障害を生じる血液疾患など種々の原因がありますが、貧血の原因として大多数を占めるのは鉄欠乏による貧血です。鉄欠乏の原因には鉄の摂取不足や吸収力低下なども時にあるものの、出血による鉄欠乏が大多数です。女性では月経の出血により鉄欠乏性貧血を起こすことが多いものの、鉄欠乏性貧血では消化管の病気による出血に注意が必要であり、しばしば内視鏡による精密検査が必要になります。
④悪性腫瘍
早期癌では多くの場合は無症状ですが、悪性腫瘍が進行してくると全身倦怠感を認めることがあります。悪性腫瘍が進行すると、全身倦怠感のほかに体重減少や食欲不振、消化器の悪性腫瘍では嘔気、腹痛などの症状を伴うこともあり、また腹腔内の悪性腫瘍で高度に腫瘍が進行すると腹水貯留ををきたし腹部膨満感を自覚することもあります。悪性腫瘍が疑われる場合には、内視鏡検査や超音波検査、CTなどの画像検査を行うことで、腫瘍の有無を調べる必要があります。
⑤精神科領域の疾患
精神的な病気も倦怠感の原因となることがよくあります。ストレスがかかることなどがきっかけとなり発症するうつ病や適応障害などの精神疾患では、気持ちの落ち込みや食欲不振、不眠などの症状とともに、倦怠感や意欲低下などの症状がしばしば見られます。高齢者で起こる老人性のうつ病でも倦怠感や食欲不振、活動性の低下や認知機能の低下などの症状が見られることがあります。これらの精神科領域の病気が倦怠感の原因と考えられる場合には、専門の心療内科や精神科での専門医による治療が必要になります。
⑥その他の原因
それ以外にもさまざまな病態が全身倦怠感の原因となる可能性があります。睡眠時無呼吸症候群では、日中の傾眠傾向の症状とともに倦怠感を認めることがあります。弁膜症疾患や虚血性心疾患、不整脈などにより心機能が低下し心不全を引き起こした場合や、肺気腫などの呼吸器疾患により心肺機能が低下した場合には、体動時の息切れや動悸、倦怠感を認めることがあります。肝炎や進行した肝硬変などで肝機能障害が進行したり、急性や慢性の腎不全による腎機能障害が高度になり全身状態が悪化した場合にも、倦怠感を認めることがあります。また、薬の副作用でも倦怠感が現れることがあります。抗不安薬や抗精神病薬、アレルギー薬や麻薬系の鎮痛薬などでは眠気や倦怠感を引き起こすことがあり、抗がん剤の使用でもしばしば倦怠感や疲労感が見られます。
全身倦怠感の検査と診断
倦怠感の原因となる病気は多数あり、原因特定には倦怠感以外に併存する症状や病状経過などから、その原因疾患をある程度絞り込んだうえで各種検査を行う必要があります。炎症の有無や、腎機能障害や肝機能障害、貧血の有無、糖尿病や甲状腺機能異常や電解質異常など代謝・内分泌疾患の有無などは、血液検査を行うことである程度判断できます。急性発症の倦怠感で発熱を伴っている場合は、感染症による炎症が原因であることが多く、血液検査や検尿、培養検査、さらにエコーやCTなどの画像検査により感染源の特定や重症度判定を行います。悪性腫瘍などの腫瘍性病変が原因の場合も、内視鏡検査や、エコー、CTなどの画像検査を行い、病変の有無を確認する必要があります。また鉄欠乏性貧血が倦怠感の原因の場合には、女性であれば月経による鉄欠乏のことが多いものの、消化管の悪性腫瘍など消化管疾患が鉄欠乏の原因であることがあり、内視鏡検査が必要になることもあります。精神的な病気の有無は、血液検査や画像検査では判断できません。病状経過などから精神的な病気が倦怠感の原因と比較的容易に診断できることもあるものの、そうでない場合は身体的疾患の存在が各種検査で否定されることで、倦怠感の原因が精神的要因と判断されることもあります。
全身倦怠感の治療
全身倦怠感の治療は、その原因となる病気について異なります。感染症による炎症が倦怠感の原因である場合には発熱を伴うことも多く、発熱以外に併存する症状(例えば、咳や痰などの呼吸器症状、下痢や腹痛・嘔吐などの消化器症状、頻尿や排尿時痛などの泌尿器症状)の有無などにより、感染部位や原因微生物の特定を各種検査(レントゲンやCTなどの画像検査や、抗原検査、培養検査など)で行い、その原因の微生物に有効な薬(抗生剤や抗ウイルス薬など)を投与して治療を行います。甲状腺機能低下や糖尿病、電解質異常などの代謝・内分泌疾患が倦怠感の原因である場合には、内服薬による薬物療法で治療が行われることが多いです。血液疾患が倦怠感の原因となる場合は鉄欠乏性貧血が原因のことが多く、鉄欠乏に対しては鉄剤の投与による治療が行われますが、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、消化管腫瘍などが鉄欠乏の原因である場合には鉄分の補給のみならずそれら原疾患に対する適切な治療が必要になります。また、倦怠感の原因として頻度としては多くないもものの白血病や骨髄異形成症候群などの造血障害を伴うような血液疾患が原因の場合には、血液内科の専門医による診察・治療が必要になります。倦怠感の原因が悪性腫瘍である場合には、ある程度病状が進行していることが多く、悪性腫瘍の病状を適確に評価し患者さんの体力なども考慮して最善の治療法を選択する必要があります。また、心不全や腎不全、高度の肝障害、肺気腫などによる呼吸不全でも全身倦怠感を認めることがあり、これらが原因である場合には専門医による診察・治療が必要になります。精神的なことが倦怠感の原因となることもしばしばあり、その場合にも専門の心療内科や精神科での診察と治療が必要となります。











