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高血圧

高血圧

高血圧とは

血圧とは心臓が血液を血管に送り込む圧力で、その圧力が基準値より慢性的に高い状態が高血圧です。心臓は体中に血液を送るポンプの役割を果たしており、収縮と拡張を繰り返しています。動脈圧が心臓の収縮により最高値になった値が収縮期血圧、心臓の拡張により圧が最低になった時の圧力が拡張期血圧で、血圧の測定ではしばしば125・75mmHgのように収縮期血圧・拡張期血圧と2つの値を並べて書いて表記します。高血圧では基本的には自覚症状はなく、一日の中でも血圧は変動しており、血圧高値を認めても一時的であれば多くの場合人体に大きな影響はありません。ただし、高血圧が長期の間持続すると全身の血管の動脈硬化を引き起こし、脳血管障害や心疾患などの原因になります。そのため高血圧症では、無症状であるからといって放置すると将来的に命に関わることがあり、それらの病気の発生率を低下させるために継続した治療が必要です。高血圧の90%以上は本態性高血圧症で生活習慣病としての要素が強く、減塩や体重減少などの生活習慣の改善を行うとともに、体質的な要因もあることから、生活習慣を改善しても高値が持続する場合には、内服薬による継続的な治療が必要になります。

 


高血圧の症状と治療意義

高血圧は基本的には自覚症状はありません。時に頭痛やめまいを自覚される方もいますが、高血圧によりこれらの症状が発生しているというより頭痛やめまいのために血圧が上昇している場合も多く、かなりの血圧上昇でなければ、血圧が上がること自体では症状は認めないことも多いです。血圧は心臓が収縮し血液が血管に搬出されるために生じる圧力ですが、心臓の動きは一日の中で一定ではありません。激しい運動をしたり緊張したりすると、心拍数が上昇し心収縮力も強くなり血圧も変動しますが、身体にもそれを受け止める許容力がある程度あるために一時的に血圧が少し上昇しても、多くの場合人体には大きな影響はありません。しかし、長期にわたり血圧が高い状態が持続すると、体中の血管に負担がかかり動脈硬化の原因となります。そして動脈硬化が進行して全身の血管へのダメージが大きくなると、脳梗塞やくも膜下出血、脳出血などの脳血管障害や、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患などを起こし、時に命に関わることもあります。また血圧が高いと腎臓に負担がかかり、高血圧が持続することで腎機能が低下し腎不全の原因となります。そのため、これらの命に関わる病気が起きないように血圧コントロールを行うことが、高血圧治療の主要な目的となります。


高血圧の原因

高血圧は、それ自体の原因がわからない本態性高血圧と、何か別の病気が原因で高血圧が起こっている2次性高血圧に分けられます。2次性高血圧は、副腎などの腫瘍が血圧を上昇させるホルモンを過剰に分泌したり、腎臓に流入する動脈の狭窄により体内のホルモン分泌異常が起こり生じる高血圧です。高血圧の原因が腫瘍や動脈狭窄の場合は内服薬による治療だけでは不十分で、手術による腫瘍摘出や、カテーテルでの動脈狭窄解除が必要になることもあります。しかし、日本人の高血圧の9割以上は本態性高血圧で、根本的な原因ははっきりとは分かっていないものの、運動不足、過剰な塩分摂取、喫煙や飲酒などの生活習慣や、加齢、ストレス、遺伝的な要素など多くの要因により起こると考えられています。本態性高血圧では生活習慣病としての要因が病状に大きく関わっており、食生活の改善、適度な運動、体重の減量などの生活習慣を改善することで血圧が低下することもあり、特に塩分制限が重要です。ただし、本態性高血圧では体質的な要因が関与していることも多く、生活習慣を改善しても高血圧が持続する場合は、内服治療が必要になります。


高血圧の検査と診断

高血圧の診断には、まず血圧を測ることが必要です。血圧は1日の中でも変化しており、病院でお医者さんや看護師さんの前で血圧測定をすると、自分では自覚がなくても緊張などから測定値が高く出ることもしばしばあり、これは「白衣高血圧」と呼ばれています。そのため血圧の評価には、自宅での安静時血圧である「自宅血圧」が有用であり、自宅血圧が血管障害との相関が強いことも分かっています。高血圧ガイドラインによる基準は、診察室での安静時血圧140・90mmHg以上、自宅での安静時血圧が135・85mmHg以上が高血圧と定義されています。たまたま測定して基準値以上であっても血圧高値とは言えますが「高血圧症」とは言えず、安静時に持続的に高値を示す場合に高血圧症と診断されます。高血圧症のうち90%以上のものは本態性高血圧ですが、若年発症や治療反応性に乏しい異常高値の高血圧では2次性高血圧のことがあります。2次性高血圧の診断には、血液検査でホルモン分泌異常の有無などを確認し、2次性高血圧が疑われる場合は専門病院でCTなどによる精密検査が必要になります。また、高血圧症による心負担増大で生じる心肥大や心機能低下、不整脈の有無などの検査には、心エコーや心電図、レントゲンなどによる評価が必要になることもあります。


高血圧の治療

本態性高血圧症では生活習慣が病態に大きくかかわっているため、その改善が必要になります。まず重要なのは塩分制限です。塩分摂取が過剰であると、体内の水分量が増加して血流量が増加し血圧が上昇します。1日の塩分摂取量6g未満を目標に減塩を試みます。また、肥満があると血圧が上昇し、心臓にも負担がかかります。BMI=体重(Kg)÷身長(m)÷身長(m)の肥満判断基準の計算式で示される肥満度では、BMI25以上の場合には肥満の可能性があり体重減少が勧められます。ウォーキングや自分のペースで行うジョギング、ラジオ体操などの軽運動で適度に体を動かしたりすことは、肥満の予防・改善に効果があるとともに、体への血流改善にも効果があります。ストレスを減らし適度な食事摂取を心がけることも大切で、また喫煙は動脈硬化を促進するために禁煙が勧められます。生活習慣の改善でも血圧が下がらない場合、内服治療も併用します。高血圧以外に動脈硬化をきたす高脂血症や糖尿病が併存する場合には、これらに対する治療も同時に必要です。また高血圧症の原因が2次性高血圧である場合は、専門病院での精密検査を行い外科的手術や血管狭窄の解除のための専門的治療が必要になることもあります。