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膀胱炎

膀胱炎

膀胱炎とは

膀胱炎とは膀胱内に細菌感染を起こすことで、排尿時痛や残尿感、頻尿などの自覚症状を認める病気で、尿自体もしばしば細菌感染により混濁したり血尿を認めたりします。原因菌は大腸菌を始めとした腸内細菌のことが多く、細菌が尿道から逆行性に膀胱に感染して起こるため、人体の構造的に肛門から尿道までの距離が短くまた尿道自体の長さも短い女性に圧倒的に多く発症します。膀胱炎の診断は、患者さんに症状や病状経過を聞くことで、膀胱炎に典型的な症状が確認でき、検尿検査で尿潜血や尿中の白血球が検出さされたり、また慢性膀胱炎では亜硝酸塩が尿検査で検出されると膀胱炎と診断されます。一時的な細菌感染による急性膀胱炎であれば、しっかりと水分を摂取し十分な尿を排出することで膀胱内の細菌を洗い流すとともに、抗生物質を内服することで1週間前後で治ります。ただし、難治性の膀胱炎や頻繁に膀胱炎を繰り返す場合には、膀胱内結石や尿路の腫瘍性病変などが併存している事があり、それらの病気の有無などを調べるためには、専門の泌尿器科の病院を受診してエコーなどの画像検査を行ったり、膀胱鏡で直接膀胱内の観察を行う精密検査が必要になることもあります。


膀胱炎の症状

膀胱炎の症状としては、排尿時痛や頻尿、残尿感などの自覚症状があげられ、また尿自体の変化としては尿が混濁したり、肉眼でもわかる血尿を認めることもあります。排尿時痛は膀胱に炎症が起こるりことで生じ、典型的には排尿の終わりごろに差し込むような痛みを下腹部や尿道口に感じます。また、膀胱炎になると膀胱の炎症による刺激のためトイレに行く回数が増加し、頻回ににトイレに行きたくなるような頻尿の症状を自覚することもあります。またトイレで排尿をしても膀胱内の尿を全部出し切っていないような残尿感を自覚することも多く、残尿感のためにトイレで尿を出したいような感覚があるために何度もトイレに行くものの、実際に排尿しようとしても、尿が出ないというような症状を自覚することもあります。それ以外にも、膀胱炎では尿自体が混濁したり、時に血尿を認めることもあります。細菌感染が膀胱のみに限局している場合には、発熱を認めることは比較的稀ですが、細菌感染が腎臓まで広がり腎盂腎炎を併発したり、男性の場合には前立腺炎を併発したりすると、時に38度以上の高熱を生じることもあります


膀胱炎の原因

膀胱炎の原因は膀胱内に細菌感染を起こすことであり、そのほとんどが腸内細菌の感染です。その中でも原因菌の80%程度が大腸菌と考えられています。大腸菌は腸内細菌の一種で便中に存在し、大腸内に住み着いている常在菌で肛門付近にも存在しています。大腸菌を主とした腸内細菌が、尿道から膀胱に侵入して逆行性の細菌感染を起こすことにより膀胱炎は起こります。人体の構造的に女性は男性に比べて肛門から尿道口までの距離が短く、また尿道自体の長さも短いため、膀胱炎は男性より女性に圧倒的に多く発症します。また日常的に尿意を我慢することが多かったり、生理や性行為などにより膣からの細菌感染が起こりやすいことなども、女性に膀胱炎が多い理由と考えられています。膀胱内への細菌感染が膀胱炎の原因ではあるものの、感染成立には患者さんの免疫力なども関与するため、糖尿病などの免疫力の低下する基礎疾患があったり、他の病気の治療のために免疫機能を低下させる内服薬を服用している場合や、前立腺肥大や膀胱結石や、尿路の腫瘍性病変などを有している場合にも、しばしば膀胱炎は起こりやすい傾向にあります。


膀胱炎の検査と診断

膀胱炎の診断は、患者さんに症状や病状経過を確認する問診と、検尿検査をすることで多くの場合は診断できます。排尿時痛や頻尿、残尿感などの典型的な症状があり、検尿検査にて尿中の微量な血液成分である尿潜血や尿中の白血球が検出される場合には、膀胱炎の可能性が高いと判断されます。膀胱炎の血尿は、目で見るだけではわからない程度のことが多いものの、膀胱の高度炎症により出血が高度であれば、赤いのが見て分かる血尿を認めることもあります。また膀胱炎では多くの場合に細菌を攻撃する白血球が尿中に増加し、尿中の白血球の有無も検尿検査で確認できます。長期的に膀胱内で炎症が持続する慢性膀胱炎の場合は、膀胱内で亜硝酸塩という析出物ができることがあり、検尿検査で亜硝酸塩の検出があれば慢性的に膀胱内での炎症が持続している可能性が疑われます。また、膀胱炎では炎症により膀胱壁が肥厚している像が、エコーで観察されることもあります。繰り返す膀胱炎や治りが悪い難治性膀胱炎の場合には、膀胱内に結石や腫瘍性病変が存在することがあります。専門の泌尿器科では、エコーによる画像検査や、膀胱内を膀胱鏡で直接観察することで、難治性の膀胱炎を引き起こす腫瘍性病変などの併存する病気の有無について精密検査を行う場合もあります。


膀胱炎の治療

膀胱炎は抗生剤の内服治療を行うことで多くの場合は改善します。それとともに、膀胱炎の治療では飲水をしっかり行うことで十分な量の尿を排出することも大切です。膀胱炎になると頻尿や排尿時痛などの症状が出るために、頻回にトイレに行って排尿することを嫌い、水分摂取を控える方がおられますが、そのような行動は逆効果となります。膀胱炎の治療では排尿により膀胱内の細菌を排出して洗い流してあげることが大切であり、普段より多めの水分を摂取し十分な量の尿を排出することが膀胱炎の治療には重要になります。細菌感染による一般的な膀胱炎であれば、十分な量の水分摂取を行い、抗生剤の内服治療を一週間前後行うことで多くの場合は治癒します。ただし、糖尿病などの免疫力が低下する病気がある患者さんや、他の病気に対する治療薬の影響などにより免疫力が低下している患者さんでは治療期間が遷延することもあります。また膀胱内に結石や腫瘍などの別の病気が併存している場合には、膀胱炎を繰り返したり難治性の膀胱炎となることがあるため、専門の泌尿器科の病院での精密検査や治療が必要になることもあります。