· 

胃癌

胃癌

胃癌とは

胃の壁は、食べ物が通る側の内側面から順に、粘膜、粘膜下層、固有筋層、漿膜の4層で構成されていますが、胃癌は胃壁のうち最も内側の粘膜層の細胞が、何らかの原因により癌細胞となり増殖することで発生します。癌細胞は粘膜から最外層の漿膜に向けて増殖し、リンパ管や血管に侵入すると、リンパ液や血液の流れに乗り、肝臓を始めとする周囲の臓器に転移を起こします。胃壁の最外層である漿膜の外まで増殖すると、膵臓や肝臓など腹腔内の周囲の臓器に直接広がることもあります。また、漿膜から剥がれ落ちた癌細胞が腹腔中に散り腹膜の表面に生着することもあり、腹膜転移といわれます。胃癌のうち特殊なタイプとしてスキルス胃癌があり、これは胃の粘膜下を這うように進展するために粘膜表面に癌細胞が表れにくく、早期の発見が難しいことがあります。胃癌の原因には、ピロリ菌感染や塩分摂取の多い食事などがあげられ、昔は日本人の胃癌による死亡率は高かったものの、近年はピロリ菌の除菌や、胃癌に対する各種治療の進歩により、胃癌による死亡率は低下傾向です。一般的に癌の治療では早期発見・早期治療が重要で、胃癌でも癌が全身に広がる前に治療を開始できれば、各種治療により完治が可能です。早期の胃癌は自覚症状がないことが多く、そのため定期的な検査による早期発見・早期治療が重要になります。


胃癌の症状

胃癌は癌がまだ小さい早期の状態では、まず症状があることは少なく、癌がかなり大きく進行してからも、ほとんど症状を自覚しないこともあります。胃癌の症状としては、みぞおち周囲の不快感や痛み、吐き気や、むかつきなどの消化器症状がありますが、これらの症状は胃癌に特有な症状ではなく、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などの良性疾患でもしばしば見られます。また、体重減少や倦怠感、貧血や黒色便などの症状のため各種検査を行い、結果的に胃癌と診断されることもあります。

胃癌の原因

胃癌の原因としては、いくつかの要因があげられます。ピロリ菌への持続感染や、塩分の多い食事、喫煙習慣や、多量の飲酒、遺伝的な体質などが原因として考えらえています。ピロリ菌は、1日2回朝夕食後に除菌薬を1週間きちんと内服することで、80%から90%の確率で除菌することができます。ピロリ菌の除菌は発癌率を低下させるため、ピロリ菌感染状態にある場合には除菌治療が勧められます。

参考ブログ:ピロリ菌感染症

胃癌の検査と診断

バリウム検査で胃癌が疑われることもありますが、バリウム検査では細胞採取による病理検査ができないため、胃癌の確定診断には内視鏡検査がほぼ必須です。胃には食べ物を消化する胃酸があるために、胃酸による炎症が胃粘膜を、赤くしたり、白っぽくしたり、凸凹したりすることはよくあります。しかし、このような粘膜変化は早期胃癌でも起こるため、時に内視鏡検査でも胃癌の発見に難渋することがあります。そのため、胃癌の診断は色素散布や特殊光などによる詳細な内視鏡観察と、細胞採取にて癌細胞の存在を顕微鏡で確認する病理検査で行います。胃癌と診断された場合、治療方針を決定するために癌の広がりを評価する必要があります。癌がどれだけ胃粘膜の深層まで深達しているかについては、内視鏡での詳細な観察や、内視鏡の先端にエコー機能がついた超音波内視鏡などで評価します。また、腹部エコーやCT、MRIなどにより、他臓器やリンパ節などへの転移の有無など、胃以外への癌の広がりを評価します。血液検査は補助的な検査として用いられ、貧血の有無、腎臓・肝臓の状態などを調べます。腫瘍マーカーの上昇もしばしば見られますが、胃癌でも上昇しないこともあります。これらの検査を総合的に判断し、個々の胃癌に対する最善の治療方針を選択します。


胃癌の治療

癌の治療は、癌が局所にとどまっている場合には切除により完治が可能です。内視鏡での治療で完治ができるのは、その形態にもよりますが、リンパ節転移の可能性がない早期胃癌の一部のものに限られます。内視鏡治療の適応とならない一部の早期胃癌や進行胃癌では、遠隔転移がない場合には、患者さんの全身状態にもよりますが、外科的な開腹手術が選択されるることが多いです。リンパ節転移や遠隔転移がある場合でも、他臓器と一緒に切除を行う合併切除や、腫瘍の量を減らすための減量手術などの外科的手術が行われることもあります。また、抗がん剤治療を先行して行い、その後に外科的手術を施行する場合もあります。遠隔転移があり手術で癌の摘出が困難であったり、再発した癌の場合には、抗がん剤による薬物療法が選択されることも多いです。それ以外にも薬物療法が選ばれる場合として、術後に癌の再発予防のために薬物療法が選択されることもあります。いずれの治療も、癌の広がりや、患者さんの体力・全身状態を考慮したうえで、最善の治療法を選択してゆくことになります。